2008年8月3日

熱中症を防止しよう

 連日の猛暑の中で、熱中症にかかる人が続出しています。熱中症とは、高温多湿の環境下で発症する障害の総称です。血圧低下と脳血流の減少で起こる「熱失神」、脱水による頭痛、めまい、吐き気、倦怠感などの「熱疲労」、脱水に加えて塩分の補給不足で起こる四肢筋や腹筋の「熱けいれん」、体温の調節機能が破綻して脳神経の働きが失われ、ときに死に至る「熱射病」の各病型があります。

 熱中症は、かかる前に予防することが肝要です。屋外にいる子どもに対して、気象条件をよく把握したうえで、涼しい場所での休憩と水分・塩分のこまめな補給を心がけたいものです。塩分補給の目安は、水1リットルにつき塩1~2グラム(0.1~0.2%濃度)です。顔を赤くしながら汗をたくさん流しているときは、深部体温が上昇しているサインですので迷わず休ませましょう。服装は軽装とし、吸湿性や通気性のよい素材にします。帽子は直射日光を遮るために大切です。背の低い子どもでは、地面からの照り返しで体感温度が2~3℃高くなるため、大人が暑いと感じているとき子どもはさらに高温の環境下にいることになります。ご留意ください。風邪や睡眠不足や朝食抜きなどの体調不良も、熱中症の原因になります。疲れた身体で無理な運動をしてはいけません。身体が暑さに慣れていない時期(たとえば梅雨明け)に熱中症にかかりやすいため、日頃から適度に外遊びを奨励し、身体を暑熱に対して徐々に慣らしていく過程が大切です。暑い環境の中で3~4日過ごすと、汗をかくための自律神経の反応が早くなり体温上昇を防ぐことが上手になります。室内にいる子ども(とくに乳幼児)には、エアコンの使用や風通しを良くすることで、熱がこもらないように配慮しましょう。最近の都会ではヒートアイランド現象のために、夕方になっても気温がなかなか下がりません。エアコンの使用には賛否両論ありますが、室外との気温差を大きくしすぎない、冷気を子どもに直接あてない、冷気が下層に溜まらないように扇風機で対流させる、適度の換気を行う、などを心がければ問題はないと思います。筆者は今の季節、室温を28℃に調整して過ごしています(建物の条件によって適温は異なります)。室内にいれば熱中症にかからないとは限りません。炎天下で自動車の中に放置された子どもが死亡する事件が毎夏、報道されます。たとえ短時間でも、子どもを車内に置き去りにすることは止めましょう。

 熱中症は応急処置を知っていれば救命できる病気です。気分がすぐれない、だるい、頭が痛いなどと訴えたときは、すぐに運動を中止させ、風通しが良く涼しい場所に衣服をゆるめて横たえ、冷たい水分(糖分と塩分を含むイオン飲料が最適)を与えましょう。アイスパックで頸や腋の下や足の付け根を冷やしたり、水を全身にかけたりすることは、体温を下げるために有用です。足を高くして末梢から中心部にかけてマッサージすることは、循環血液量を増やすために有用です。それでも、目の焦点が合わない、応答が鈍い、手足の動きが悪いなどのサインが現れたら緊急事態です。直ちに医療機関に受診してください。救急車を待つ間も、体温を下げる試みを続けてください。

 子どもの熱中症の防止には、保護者や教育現場の留意が不可欠です。高温多湿の日本の夏と上手に付き合いましょう。楽しい夏休みをお過ごしください!