2012年11月11日

インフルエンザワクチンの必要性

 当院はインフルエンザワクチンの接種を積極的に行っています。ワクチンに関するご質問をしばしばお受けしますので、今回のコラムではワクチンの必要性についてお話しいたします。

1 ワクチン接種の直接効果
 インフルエンザの予防の基本は、ワクチンを接種することです。今季はA香港型の変異ウイルスの流行が予想されるため、例年以上にワクチン接種が大切になります。
 日本では過去に学童の集団接種が行われていましたが、効果が期待できないとして1994年に中止されました。しかしながら、東京都内の一小学校を24年間にわたり調査した結果から、ワクチンの接種率が低下した年は、欠席率と学級閉鎖日数がともに上昇することが明らかにされました。つまり学童の集団接種は学校内のインフルエンザ流行の防止に役立っているといえます。

2 ワクチン接種による間接効果
 学童集団接種が行われていた1970~80年代と、中止した後の90年代後半以降を比べると、90年代後半以降に (1) 学級閉鎖が3倍に増えた、(2) 高齢者の超過死亡(インフルエンザ関連死亡)が急増した、(3) 乳幼児のインフルエンザ脳症が急増した、の三点が顕著になりました。(1) は先に述べたワクチンの直接効果ですが、(2) と (3) は間接効果として説明できます。
 学童にワクチンを接種すると → 学童がインフルエンザにかからず、インフルエンザを家庭に持ち込まない → 同居している祖父母や弟・妹がインフルエンザにかからない、という流れができます。これを間接効果といいます。健康な成人と小児がワクチンを接種することは、同居する家族全員、とくにインフルエンザに対して最も抵抗力の弱い高・低年齢層の人たちを守ることにつながります。

3 ワクチン接種による脳症の予防
 ワクチンを接種してインフルエンザにかからなければ、インフルエンザ脳症にもなりません。たとえば、ワクチンの有効率を70%と仮定します。脳症で死亡した小児が年間50人いるとして、その全員が流行前にワクチンを接種していたら、35人はインフルエンザにかからず、当然、脳症に至ることもありませんでした。したがって、ワクチンは脳症の予防に有効です。残りの15人はインフルエンザにかかりますが、脳症に至るのか、普通のインフルエンザで済むのか、症例数が少ないために結論はまだ出ていません。なお、脳症を発症するのは、インフルエンザ患者1万人あたり数人で、毎年100~500人がかかります。致死率は7%前後、重い後遺症をのこす確率は25%前後です。

4 ワクチンの効果の限界
 ワクチン株と流行株が一致した場合、健康成人で70~90%の発病阻止効果があります。小学生以上の学童でも、成人とほぼ同等の効果が期待できます。しかし6歳以下の低年齢になるとワクチンの有効率は低下し、A型で50%台、B型で20%台に過ぎません。インフルエンザワクチンの効果に限界がある理由は、(1) インフルエンザウイルスが頻繁に自分の構造を変化(変異)させること、(2) インフルエンザに対する免疫をほとんど持たない低年齢児において、現行の不活化ワクチンは弱すぎること、などです。(2) については、昨季から小児への接種量が増えたので、有効率の若干の改善は期待できますが…。諸外国では、鼻に噴霧する生ワクチンや新製法の不活化ワクチンなど、強いワクチンの研究と開発が進んでいますが、ワクチン後進国の日本では実現はまだ遠い先の話のようです。
 以上のように十分に満足できるワクチンではありませんが、インフルエンザにかかる危険を考えると、接種しておく方がやはり安心でしょう。とくにインフルエンザ脳症や重症肺炎は、進行があまりにも早いため、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)による防止が間に合いません。ワクチンが唯一、有効な対処法です。

5 卵アレルギーとインフルエンザワクチン
 インフルエンザワクチンには、ごく微量の鶏卵由来成分が含まれています。しかし卵アレルギーを持つ人すべてが接種できないわけではありません。過去にアナフィラキシーショックを起こした重度の人は不可です。軽微な症状を呈するだけの人は、医師と相談の上で適否をお決めください。

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