2017年10月25日

かぜで喉(のど)が赤くなるって本当 !?

 子どものかぜを診療していると、「喉は赤いですか?」と尋ねられることがよくあります。かぜをひくと、本当に喉が腫れたり赤くなったりするのでしょうか? 今回のコラムでは、かぜの診療でよく使われるフレーズの確かさについて検証してみたいと思います。

 「喉が赤い」ことが診断の手がかりになる病気はいくつかあります。溶連菌感染症は特徴的な赤みを生じるため、熟練した医師であれば比較的容易に診断できます。ちなみに、喉かぜで抗菌薬を必要とする病気は、溶連菌感染症ただ一つです。ヘルパンギーナや手足口病などの夏かぜは、アフタとよばれる円形の潰瘍(白色)と周囲の紅暈(赤色)を現します。アデノウイルス感染症は、扁桃腺が赤く腫れたり付着した膿で白くなったりします。その他、EBウイルス感染症、ヘルペス性歯肉口内炎、麻疹などが、喉や口腔粘膜に特徴的な所見を現します。インフルエンザも時々、喉に特徴的な所見を現すことがあります。喉を丁寧に診ることは、感染症の病原体を推測するためにとても大切であることをご理解いただけると思います。ただし、喉の赤みが病原診断の手がかりになるケースはむしろ少数派で、かぜの10〜20%くらいでしょう。

 かぜの大部分は、喉に赤みを生じません。かぜウイルスが主に感染する身体の部位は、口をア〜ンと開けた時に見える中咽頭ではなく、目視できない鼻腔や上咽頭(喉より上の部分)だからです。したがって、喉が赤いか赤くないかだけで、かぜが重いか軽いかを判断することはできません。喉が赤くないから大丈夫、とは言えないのです。かぜの診断と治療方針の決定は、喉の視診だけではなく、全身をしっかり診察することが肝要です。

 ではなぜ、喉の赤みが強調されるのでしょうか? ここから先は筆者(玉井)の独断と偏見になりますが、医師が丁寧な説明を怠る時に使われる便利な常套句が「喉が赤い」なのだろうと思います。「喉が赤いから抗菌薬(抗生剤)を出しておきますね」と言っておけば、たいていの患者さんは納得します。しかし、それは根拠に基づいた正しい医療ではありません。そもそも、本当に赤いのでしょうか。赤さの基準は曖昧と言わざるを得ません。繰り返しになりますが、喉が赤い時に抗菌薬が有効な病気は溶連菌感染症ただ一つです。「喉が赤くて、溶連菌感染症の特徴を備えているので、抗菌薬を出します」であれば正解です。迅速検査で溶連菌の存在を証明できればさらに確実です。単に「喉が赤いから抗菌薬」には賛同できません。

 「鼓膜が赤い」「鼻水が黄色い」もよく使われるフレーズですが、抗菌薬を処方する理由としては薄弱です。かぜの合併症として起こりうる中耳炎や副鼻腔炎を正確に診断するためには、他にも注目しなければならない点が多々あって、総合的な判断が求められます。そして抗菌薬の適応があると判断したら、その根拠を明示すべきでしょう。抗菌薬の乱用と薬剤耐性菌の増加を防ぐために、昔から安易に使用されてきたフレーズを排して、適正な診察と説明を心がけたいと思います。

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